冬と顔のむくみ
――医学的視点から考える

冬と顔のむくみ──医学的視点から考える

12月に入ると、街はイルミネーションで彩られ、心は華やぐ一方で、身体は確実に季節の変化を受け止めています。

特に気温の低下と乾燥は、私たちの体調や肌にさまざまな影響をもたらします。その中でも、多くの方が鏡をのぞき込みながら気になるのが「顔のむくみ」ではないでしょうか。朝起きたとき、まぶたが腫れぼったく感じたり、頬が丸く見えたりする。その一因には、冬特有の生活リズムや体の反応が関わっています。

本稿では、医学的に「むくみ」がどのように起こるのかを解説しつつ、12月という時期の特徴を交えながら考察してみましょう。

この記事の監修者

日本美容外科学会認定専門医 Original Beauty Clinic GINZA 院長

佐藤 玲史(さとう れいじ)

東京都生まれ。慶應義塾大学 商学部を卒業後、保険会社に勤務。
医師になるために医学部受験を決意。国立 東京医科歯科大学(現 東京科学大学) 医学部医学科卒。
大手美容外科にて千葉・新宿・上野の各院で院長・顧問を歴任。有名美容外科の銀座にて院長就任。
2020年4月銀座にてOriginal Beauty Clinic GINZAを開院。現在に至る。

医学的に「むくみ(浮腫)」とは、皮下組織に余分な水分がたまった状態を指します。本来、血管と細胞の間では、血液中の水分や栄養が出入りしながらバランスを保っています。ところがその調整が崩れると、組織の間に水分が過剰に滞留し、見た目に膨らんで見えるのです。

むくみを大きく分けると、全身性と局所性があります。心臓や腎臓の病気などに伴う全身性のむくみは医学的治療を要しますが、顔のむくみは多くの場合、一過性かつ生活習慣に起因するものです。

では、なぜ12月に顔のむくみを感じやすいのでしょうか。主な理由を医学的に整理してみましょう。

(1) 代謝の低下

冬は外気温が下がるため、体は熱を逃がさないように血管を収縮させます。特に末梢の血流は滞りやすく、その結果、血液やリンパ液の循環が鈍くなり、顔に余分な水分が残りやすくなります。

また、寒さによって活動量が減ることも代謝の低下に拍車をかけます。

(2)乾燥と塩分摂取

冬は湿度が低く、皮膚の乾燥を招きます。乾燥自体は直接むくみの原因にはなりませんが、肌のバリア機能が弱まることで炎症を起こしやすくなり、局所の血流やリンパの流れに影響を与えます。

さらに、年末年始は飲み会や忘年会など塩分の多い食事が増えます。塩分は体内に水分を保持させる性質があるため、過剰摂取はむくみを助長します。

(3) 睡眠とアルコール

12月はイベントが多く、睡眠時間が不規則になりがちです。睡眠不足は自律神経の乱れを招き、ホルモンバランスや体液の循環に影響します。

またアルコールは一時的に血管を拡張させ、体内の水分バランスを崩すことで翌朝のむくみを悪化させます。

むくみが顔に現れやすい理由は、構造的特徴にもあります。顔には毛細血管が豊富に分布し、皮下組織には水分がたまりやすい空間が広がっています。特にまぶたは皮膚が薄く、脂肪組織の水分保持力も強いため、わずかな水分の停滞でも腫れぼったく見えてしまうのです。

また、リンパの流れが重力の影響を受けにくい首や顔周囲は、滞留しやすい部位です。

体が横になっている睡眠中はさらに水分が顔へ移動しやすく、起床時のむくみにつながります。

顔のむくみは命に関わるものではありませんが、見た目や気分に直結するため、早めの対策が大切です。以下に医学的根拠に基づいた予防・改善法を紹介します。

(1) 温めて血流を促す

冬は血管収縮が大きな原因です。ぬるめのお風呂や蒸しタオルで顔を温めると、血流とリンパの流れが改善し、水分の排出が促されます。特に就寝前の温浴は翌朝のむくみ予防に効果的です。

(2) 塩分とアルコールを控える

年末のご馳走は魅力的ですが、塩分やアルコールの過剰摂取はむくみの大敵です。アルコールを飲む際は同量以上の水を意識的に摂り、翌朝の水分バランスの乱れを緩和しましょう。

(3) 睡眠リズムを整える

睡眠は自律神経を整え、体液の調整に欠かせません。夜更かしを続けると、顔のむくみが慢性化しやすいため、できるだけ一定のリズムで眠ることが大切です。

(4) 軽い運動とストレッチ

冬は活動量が減りがちですが、体を動かすことは全身の循環改善につながります。ウォーキングやストレッチを習慣化することで、顔のむくみも和らぎます。

(5) マッサージ

医学的には「リンパマッサージ」の効果は必ずしも強く証明されているわけではありませんが、軽く首から鎖骨にかけてさすり流すことで、血流が改善し自覚的にスッキリ感を得られることが多いです。

ただし強くこすりすぎると炎症や色素沈着を招くため、あくまで優しく行うことが重要です。

一過性のむくみは生活習慣の調整で改善しますが、なかには病気が隠れている場合もあります。心不全や腎疾患、甲状腺機能低下症などでは顔を含めた全身にむくみが出ることがあります。むくみが長期間続く、急速に悪化する、息切れや倦怠感を伴う場合は、医療機関での受診が必要です。

顔のむくみは美容上も大きなテーマです。実際には「むくみ」と「たるみ」が重なって見えることも多く、加齢による皮膚や靭帯の緩みと区別がつきにくいことがあります。

近年は美容医療の分野でも、ラジオ波や高周波治療などで血流を促し、むくみや肌質改善を狙う施術が行われています。ただし、あくまで補助的なものであり、日々の生活習慣の見直しが根本対策となることを忘れてはなりません。

最後に、顔のむくみは心の状態とも密接に関わっています。年末は忙しく、ストレスも増えやすい時期です。ストレスは自律神経のバランスを乱し、血流の滞りを引き起こします。

朝のむくみを見て気分が沈むと、さらに悪循環となりかねません。自分の体をいたわる時間を持ち、睡眠と食事、適度な運動を心がけることが、美容にも健康にも通じるのです。

12月は気温の低下と乾燥が重なり、代謝や循環が鈍くなる季節です。その結果、顔のむくみを訴える人が増えます。しかし、多くの場合は生活習慣や環境に由来する一過性のものであり、血流改善や食生活の工夫で十分に対処可能です。

鏡に映るむくんだ顔は、体からの小さなサインでもあります。「年末だから仕方ない」と見過ごすのではなく、体の声として受け止め、整えてあげること。それが冬を健やかに、美しく過ごす第一歩となるでしょう。

※専門家の見解であり効果を保証するものではありません
※QVCがお悩みのヒントになるコラムの執筆を専門家にお願いしました

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